Kodai_Note

耳を澄ますように古代を感じる試み。

東大寺盧舎那仏像の造立で知られる行基が整備した有名な池とは?

行基といえば、一時は朝廷から弾圧をうけながらも民衆に慕われ、数々の社会事業に携わり、行基菩薩と敬われた奈良時代の僧。後に聖武天皇の帰依を受ける行基の功績といえば743年の東大寺盧舎那仏像の造立だろう。 莫大な費用を調達し、大勢の人夫をまとめ…

古代を通じてたどりつく私達の無意識

奈良や京都、あるいは飛鳥の地を訪ね歩き、古代について調べ、想いを巡らせていくうちに、なぜ、自分はこれらの事象に興味があるのだろいうと考えることがある。その原動力の正体を考えと、ゆかりの地を訪ね歩き、その地の古代の痕跡を感じてみようと感覚を…

「十一面観音」にまみえる聖林寺で出会ったもう一つの美

昨日、岡寺へ取材に行った際、足をのばして聖林寺を訪れた。伽藍を誇示することなく、山間の坂道、近隣の民家と木々に埋もれるように建っている。 曇り空、降りそうな湿気を感じながら、山門に繋がる階段を上った。 聖林寺は白洲正子著「十一面観音巡礼」で…

岡寺:法力で龍を退治した奈良仏教のルーツ、義淵僧正創建の寺

観音の申し子として生をうけ 良弁や行基を育てた傑僧義淵 明日香村の東、岡山の中腹にまみえるのが西国三十三ヶ所観音霊場*の第七番札所となる岡寺。 坂道を登り、門前町を横目に息を切らせて歩き、重要文化財に指定されている仁王門へ。 境内にはいると堂々…

興福寺に隣接する、東向商店街の真実とは?

東に位置する興福寺を忖度して生まれた東向き商店街? 近鉄奈良駅を地上にあがると、出迎えてくれるのが東大寺に向いて立つ行基像だ。そのかたわらには、「東向き商店街」という名の商店街が南北に延びている。商店街を南に少し歩くと東側に興福寺へつながる…

大阪の都心を貫ぬく大川、堂島川、安治川は人工の水路だった

難波堀江はどうしてつくられた? 大阪の都心を貫いて高層ビルやホテル、高速道路を水面に映し、大川、堂島川、安治川へと名を変える。豊かな水量を湛えて流れるこの川のはじまりが、人工的に掘られた水路だったということをご存じだろうか。 高層ビルが並ぶ…

かっては「岸辺の道」だった?「山辺の道」

「山辺の道」とは春日山の麓から奈良盆地の東に連なる小高い山やまの裾にそって南下し三輪山の麓まで続く大和の古代道路のひとつ。 全長35キロメートルの道の周囲には古寺社や古墳など、名所・名跡が点在し、四季折々の趣があって美しく、「美しい日本の歩…

十一面観音という仏教世界の入り口

古刹を見つけると、十一面観音の姿を探す。仏教関連書籍を紐解くと、十一面観音の名前を探す。盧舎那仏、大日如来、不動明王、数々の如来、菩薩、明王、天部がいるなかで、私にとって十一面観音菩薩は特別な存在だ。 十一面観音に惹かれる理由、一つにはそこ…

「頭塔」が私たちに語りかけるもの

それは、民家のすき間から姿を見せた 春日山原始林を取材した帰り道、高畑界隈にさしかかった民家の家々の隙間から不自然な瓦が視界に飛び込んだ。あれはなんだろう?と訝しみながら近付くと、それは不可解な建物だった。ピラミッドのような四角錐、 5段ほど…

平城宮跡のなかを電車が走る理由

奈良体験、最初のクライマックスなのだが。 大阪、難波駅から奈良に向かう近鉄奈良線の電車が大和西大寺駅を出てしばらくすると、車窓に壮大な歴史パノラマが広がる。 まず、右手に艶やかな朱塗りの朱雀門、そして左手には近年整備された平城宮跡と荘厳な大…

矢野顕子の『在広東少年』と江戸時代の僧侶・木喰の関係

矢野顕子の人気曲でYMOの世界ツアーでも披露された『在広東少年』という歌があった。アップテンポのハードでポップな曲だ。謎めいたイントロと開放的サビ、それをつなぐ印象的な歌詞はなかなかシビれる。 www.youtube.com 「黒色い瞳の中に赤い花が咲いて。…

天平時代へのタイムマシン、『正倉院展』 この秋も開催

2018年度70回目となる『正倉院展』。10月27日から。 奈良の秋の風物詩というべき『正倉院展』が10月27日から17日間にわたって行われる。この季節になると、私も正倉院展モードにスイッチがはいり、皮膚が泡立つ感覚を覚えはじめる。私の審美眼など、たいした…

母から聞いた、大阪空襲 (1945年3月13日)

終戦記念日(8月15日)が近づいてきたので、身近な戦争経験者、母に当時のことをLINEで聞き出し、書きとめた。 今年、父は83歳、母は80歳。有り難いことに両親とも健在で、東大阪市中石切で静かに暮らしている。大阪に大規模な空襲が行われたのは、今から73年…

瓢箪山稲荷神社とアオバズク

ひさしぶりに、東大阪市にある瓢箪山稲荷神社に足を運んだ。北隣にある大東市の寺川に暮らす友人を尋ねた帰りのこと。寺川から瓢箪山駅行きのバスに乗り込み、近鉄電車に乗る前に、瓢箪山稲荷神社に立ち寄った。 瓢箪山稲荷神社の参道。写真は別の日に撮った…

現在の淀川は生まれて100年。大阪市内で暴れ回った旧淀川の流れ。

甚大な被害を及ぼした7月上旬、西日本豪雨。この記録的な大雨によって200人以上の方が亡くなり、863万人以上の人々に避難勧告や指示がだされた。 あらためて、被害に遭われ亡くなった皆様へお悔やみを、被害に遭われた皆様にもお見舞い申し上げたい。 私が暮…

奈良のお土産、[柿の葉寿司]。材料の鯖はどうやって仕入れた?

柿の葉寿司といえば、近鉄沿線のコンビニ、あるいは奈良県内を車で走ると売られているのが目にとまる、奈良の風土料理だ。観光客にとってのお土産ものであり、同時に、奈良の人たちの生活に密着した日常食でもある。 そもそも、柿の葉寿司は奈良県吉野郡、そ…

「七夕伝説」の発祥は、大阪の枚方市と交野市?

「七夕伝説」は織姫と牽牛の恋物語 たまには、季節に合ったものを、ということで今回は「七夕」についてのトピックス。まずは「七夕伝説」についておさらいを。 七夕伝説のヒロインは天帝の娘であり神様の着物つくりにたずさわる織女(おりひめ)。天の川の…

鴨川から松原通、鳥辺野方面への道はあの世へのアクセスポイント

松原通に漂う並々ならぬ気配の深層 賑やかな四条河原町を南下し、鴨川を渡った松原通は清水寺に至る、細く古い道だ。 はんなりと雅やかな雰囲気が多い京都の町のなかで、この通りは独特な雰囲気を漂わせている。 民家がひしめく道すがら、お地蔵さんや寺院に…

春日山麓の尾根を5m削り、築かれた東大寺大仏殿

東大寺はいうまでもなく、大仏殿が鎮座する奈良仏教の中心地だ。 広大な境内の石畳の参道から大仏殿を眺め、そこに青い空が広がると、 まるでタイムトリップしたような気分となる。 あおによし ならのみやこは さくはなの におうがごとく いまさかりなり 小…

大阪に存在した、巨大な「河内湖」とは?

いまや、大阪湾といえば港区、大正区、住吉区、此花区や西淀川区の向こう側、であるが、大阪市の大部分は海の底にあった。 約2万年前、氷河期の終わりの頃は海面が低く、大阪湾や瀬戸内海は海のない干上がった状態だった。気温がじょじょに上昇し、氷が溶け…

淀川河口、西淀川区の地名の多くに「島」の字がつくわけ

「中島」「姫島」「御幣島」「歌島」「竹島」「出来島」「百島」「西島」……。神崎川と淀川に挟まれ、大阪湾に顔をのぞかせる大阪市の南西の角のエリア、西淀川区には島を冠する地名が多い。 淀川の河口付近に位置する地が「〜島」と名付けられた理由、それは…

パワースポットとして知られる天川村で「能」が栄えた理由

芸能の神様として多くの芸術家やタレントの崇敬を得、1989年に社殿の建て替えの際に行われた神事、正遷宮大祭には長渕剛やYMOの細野晴臣、環境音楽の大家 ブライアン・イーノを召喚しての奉納を執り行った天河大弁辨天社。 当時は、アーティストやニューエイ…

「こもりくの初瀬」宿命的な長谷寺の地形と信仰

本尊十一面観音像をはじめ、約千点にも及ぶ文化財を所蔵する長谷寺。四季折々の花が咲き、なかでもぼたんは約150種約7,000株が咲きそろうことから、「花の御寺」と称されている。 車で向かうなら、三輪山の裾から初瀬川を遡って車で10分強。ほどなく、長谷寺…

春日大社の御本殿の段差が整備できない理由

今年、2018年には創建1250年を迎える春日大社。東大寺と並んで奈良の観光地として最も多くの人たちが訪れるが、その魅力の一つが境内が原生林に隣接しているということだ。たしか、養老孟司ものたまっていたが、孤島や山間の奥深くでならいざしも、…

夕日を礼拝し、浄土を思う。四天王寺、「日想観」。

上町台地から太陽を崇拝する、日想観という信仰があった。 その日は午後5時半を過ぎたころ、夕日が西門の間から徐々に沈んでいく。居合わせる人々は境内から手を合わせ、般若心経を唱えながら西の彼方に沈みゆく夕日を眺める。 これは、聖徳太子が創建した…

「お水取り」発祥の地 笠置寺 正月堂

東大寺の二月堂で行われている「お水取り」その発祥地となる笠置寺。 奈良や京都と比べると観光地として賑わっているわけではなく、ときおり、ハイキングで笠置山を登る人が訪れる程度の場所だが、どうしても自分の目でみてみたい史跡があった。 きっかけは…

『歴史REAL京都・奈良古代史を歩く』一部の取材を担当

『歴史REAL京都・奈良古代史を歩く』発行 洋泉社 <PART②奈良・京都歴史の舞台を歩く>ページの取材を担当。 東大寺、興福寺はなぜ都の外れに建つのか?平安京に劣らない 「極楽都市」・宇治の秘密歴史の舞台はなぜ、その場所だったのか?ブラタモリでは正確に伝えられなかったトピックスなども盛</part②奈良・京都歴史の舞台を歩く>…

取材で歩いた熊野古道のコンテンツがアップされた

年明けに取材で歩いた熊野古道のコンテンツがアップされた。和歌山での「100の旅モデル」を史跡や神社仏閣、景勝地を軸に紹介する「わかやま歴史物語」という観光ポータルサイト。 私が担当したのは熊野古道エリア。「熊野詣で」を計画される方はぜひ、ご…

3月14日、東大寺二月堂のお水取り 「十一面悔過(じゅういちめんけか)」

奈良の近くに生まれ住み、何度も奈良は訪れていたものの、お水取りを見に行ったのは初めてだった。白洲正子の「十一面観音巡礼」のなかで二月堂付近のトピックスに触れ、お水取りを始めた実忠という僧に興味を持ったことをきっかけに、ようやく足を運んだ。 …