「お水取り」発祥の地 笠置寺 正月堂
東大寺の二月堂で行われている「お水取り」その発祥地となる笠置寺。
奈良や京都と比べると観光地として賑わっているわけではなく、ときおり、ハイキングで笠置山を登る人が訪れる程度の場所だが、どうしても自分の目でみてみたい史跡があった。
きっかけは、白洲正子の『十一面観音巡礼』という書籍だ。本書のなかで、東大寺の「お水取り」と笠置寺の関係性について興味深く記され、重要人物である実忠という僧侶が覚醒したという場所が存在するのだ。
境内には目立った伽藍があるわけではなく、そのまま遊歩道のような小道を歩くことになる。その一角には、お水取りの舞台となる東大寺の「二月堂」との関連性を思わせる「正月堂」と呼ばれるお堂がある。お堂に面してそそり立つ巨石に描かれたのが弥勒磨崖仏だ。
弥勒磨崖仏は高さ16メートル、幅は15メートルほど。そのシルエットは宇宙人を思わせるが、もとは弥勒菩薩が描かれていたという。
笠置山自体には巨石が多く、古代信仰の名残も残され、弥勒磨崖仏も弥勒菩薩が描かれる前から信仰の対象として崇拝されていたといわれている。
東大寺を建立したのは聖武天皇だが、初代別当となったのは良弁という華厳宗の僧侶。その弟子にあたる、実忠は笠置寺で修行中、兜率天に到達し、内院四十九院をめぐったという。そこで、行われていた下界に伝えたのが「お水取り」とされている。
そして、実忠は笠置寺の正月道で、第一回目のお水取りを行い、次回からは東大寺の二月堂にて執り行われ、8世紀から連綿と続けられている。
*以下は、先月に書いたお水取りの様子のブログ。
実忠が二月堂で行う「お水取り(修二会)」は大胆に松明を使った呪術性の高い祭事だ。しかし、アジアにて火を使う神事をおおなう例は少ない。奈良時代、アジアでもインド方面から僧が渡来していたことが知られるが、実忠はイラン系の渡来人だったのではないかとも言われている。そうなると、彼が使う火の神事はゾロアスター教に由来するのではないかという説も囁かれている。
そもそも、「お水取り(修二会)」は何の為に行われているのか、明らかにはされていないのだ。
また、奈良町の外れ、高畑方面に頭塔という建物がある。壁がなく、屋根が幾重にも重なった奇怪な建物なのだが、その形状から日本のピラミッドとも呼ばれている。この頭塔は実忠の手によって建てられたもの。
火の儀式といい、ピラミッドといい、実忠は不可思議な要素の多い人物なのだ。
そういえば、空海も高知の「御厨人窟(みくろど)で「虚空蔵求聞持法」を行の最中に火の玉が口のなかに飛び込んだとされている。実忠も「虚空蔵求聞持法」を行っていたのかもしれない。
実忠については、もう少し深く調べたいと思う。
所在地
料金
大人:大人:300円
*笠置寺へはJR関西本線笠置駅から徒歩で45分ほど。できば、車で訪れ、余裕をもって散策したい。