Kodai_Note

耳を澄ますように古代を感じる試み。

春日大社の御本殿の段差が整備できない理由

今年、2018年には創建1250年を迎える春日大社東大寺と並んで奈良の観光地として最も多くの人たちが訪れるが、その魅力の一つが境内が原生林に隣接しているということだ。たしか、養老孟司ものたまっていたが、孤島や山間の奥深くでならいざしも、奈良の市街地からほどない地域にこれほどの原生林がそのままの姿で残されていることは非常に奇特なこと。

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世界遺産 春日大社 公式ホームページ

 

春日大社は、平城遷都後、興福寺と同様、藤原氏により創建され、氏神として栄えたと伝えられる。鹿を神使とし、山原生林の中に鎮座する。創建以来、朱の柱、白い壁、檜皮屋根の本殿・社殿が千古の森の中にその秀麗な姿をとどめている。

注目すべきは春日大社が本殿東側の御蓋山(297メートル)を神体山としているということ。みかさやまといえば、三つのかさねのある若草山を思い出す人が多いだろうが、御蓋山若草山は別の山である。

つまり、御蓋山御神体としているが、その御祭神は春日神という四柱の神だ。境内の中門の奥には、一列に4つの御本殿が並んで建てられている。御本殿は屋根は曲線を描いて反り、正面にだけ大きな庇を付けた「春日造」と呼ばれる建築様式だ。
御本殿は位置を変えず、20年に一度、社殿の一部または造り替え、御修繕を行う「式年造替」が行われている。

その第一殿には武甕槌命(タケ ミカ ヅチ ノ ミコト)、第二殿に経津主命(フ ツ ヌシ ノ ミコト)、第三殿に天児屋根命(アメ ノ コ ヤ ネ ノ ミコト、第四殿に比売神(ヒ メ ガミ)が祀られている。注目すべきは国宝である春日大社のご本殿の並び方だ。同じ大きさ、同じ様式の社殿が第一殿から第四殿まで、御蓋山の中腹のにある傾斜地に並んで建てられている。そして、それぞれの社殿には微妙に段差があり、社殿の高さも向かって右から順番に低くなっている。

 

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「式年造替」によって何度も造り替えられていはいるが、段差は一度も整地されることなく、創建当時のままの状態になっているという。その理由は、御蓋山が神体山ということと関係している。
国宝となる本殿一帯は、地面を含めて神聖なる地域だ。人間の手を加えるべきできないと古来から考えられていたのだ。
自然が象る地形に逆らわない、傾斜もそのまま本殿を建てる。そこに、自然と神に対する無言のメッセージがこめられていたのだ。

ちなみに、現在、奈良国立博物館では「国宝 春日大社のすべて」と題する大規模な展示が行われている。朝廷から庶民に至るまで広く信仰を集めた春日大社の歴史をたどり、多くの社宝や関連作品により、その全容を展示するという。

改めて、春日神社に撮影に行こうと思うが、その際に立ち寄ってみたいと思う。 

神護景雲2年(768)の創建より1250年を迎える春日大社奈良国立博物館にて 、開催期間は平成30年4月14日(土)~6月10日(日)。