Kodai_Note

耳を澄ますように古代を感じる試み。

天平時代へのタイムマシン、『正倉院展』 この秋も開催

2018年度70回目となる『正倉院展』。10月27日から。

奈良の秋の風物詩というべき『正倉院展』が10月27日から17日間にわたって行われる。この季節になると、私も正倉院展モードにスイッチがはいり、皮膚が泡立つ感覚を覚えはじめる。私の審美眼など、たいしたことはないが、古代の人々の技巧や当時の皇族、つまり聖武天皇光明皇后が過ごしたひとときに触れることができると思うと、皮膚が泡立つのだ。私にとって正倉院展とは古代へのタイムマシンのような存在である。

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東大寺 正倉院 北(正面に向かって右)から順に北倉、中倉、南倉

正倉院は北倉、中倉、南倉の三倉に仕切られているが、今年は北倉(ほくそう)10件、中倉(ちゅうそう)16件、南倉(なんそう)27件、聖語蔵(しょうごぞう)3件の、合わせて56件の宝物が出陳される。

琥珀の花心と螺鈿の花弁が魅せる宝相華文が美しい『平螺鈿八角鏡』

正倉院展では毎年、目玉となる宝物が宣伝用のビジュアルとして起用される。70回目となる本展では『平螺鈿八角鏡(へい ら でん はい の はっかく きょう)』がそれとなる。これは10年ぶりの展示となる宝物で、聖武天皇の遺愛の鏡とされ、琥珀の花心と螺鈿の花弁が魅せる宝相華文(ほうそうげもん)を特長とする。

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螺鈿かざりの鏡『平螺鈿八角鏡』

ディテールをみると、八角形の鏡の鈕(中心のつまみ部分)から全方向へ、宝相華文が脈々と広がり、装飾を施した古代の職人の卓越した技に目を奪われる。宝相華文は螺鈿(貝殻の真珠光を放つ部分を磨り平らにして細かく切り、文様の形に漆器や木地にはめこんで装飾する技法)で表しており、その花心には赤い琥珀を配置している。

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絵柄の地の部分には白、淡青、緑のトルコ石ラピスラズリの破片が散りばめられている

文様は螺鈿の界線で内外が二分され、内側は鈕を軸に8枚の葉が旋回し、周囲に2種の唐花文を4個ずつ配置。また、外区にも唐花文様と文様が4個ずつ配置されている。目をこらしてみると、ひしめく螺鈿の文様のなかに一対の尾長鳥がそれぞれの唐花を囲んでいるのが見える。森の中で鳥の影をみつけたよう、なんともいえない気持ちになるのは私だけか?

ちなみに宝相華文とは仏教系の文様の一種。宝相とはバラ科に属する植物の中国名を指し、これを文様としたもの、あるいは蓮華文の変化したもの、アオイ科のブッソウゲを文様化したもの、あるいは想像上の花の文様とも言われている。

 古代の職人達による華麗な工芸品を展示。空いている曜日は

『平螺鈿八角鏡第7号』のほか約20年ぶりの出陳となる海ガメの甲羅を用いた『玳瑁螺鈿八角箱(たい まい ら でん はっ かく ばこ)』、奈良三彩の技法で焼かれた珍しい陶製鼓(つづみ)の胴、奈良三彩の鼓の胴『磁鼓(じ こ)』などが展示される。

「第70回 正倉院展」開催概要

会期:平成30年10月27日(土)~11月12日(月) 全17日
会場:奈良国立博物館 東新館・西新館
休館日:会期中無休
開館時間:午前9時~午後6時 
※金曜日、土曜日、日曜日、祝日は午後8時まで 
※入館は閉館の30分前まで
当日 前売り・団体 オータムレイト
一般 1,100円 1,000円 800円
高校生
大学生 700円 600円 500円
小学生
中学生 400円 300円 200円

休日は長蛇の列となるので、できれば平日、とくに水曜、木曜日のお昼時や夕方頃、さらには雨の日などが来場者も少ないとのこと。ゆっくりと鑑賞するなら、そうした日をターゲットに足を運んでみるのもいい。

 

正倉院美術館 ザ・ベストコレクション

正倉院美術館 ザ・ベストコレクション

 
よみがえる天平文様

よみがえる天平文様

『よみがえる天平文様』は正倉院に収められた宝物に表されている文様をコンピュータで再現させたビジュアル集。私は本書の解説制作に携わり、天平の文様について種々勉強させて頂いた。

よろしければ、予習のための一冊としてどうぞ。