Kodai_Note

耳を澄ますように古代を感じる試み。

十一面観音という仏教世界の入り口

古刹を見つけると、十一面観音の姿を探す。仏教関連書籍を紐解くと、十一面観音の名前を探す。盧舎那仏大日如来不動明王、数々の如来、菩薩、明王、天部がいるなかで、私にとって十一面観音菩薩は特別な存在だ。

十一面観音に惹かれる理由、一つにはそこにアニミズムの傷痕を感じる点にある。山間部の泉、河川部などに人智を越えた力や神秘的な気配、畏怖の念を感じた人たちが幻視するホログラムのような願いや畏怖。そうした情念のシルエットに十一面観音というデザインとコンセプトを与えられたものが十一面観音の姿なのだと私は感じている。

そのアニミズムから、仏教世界に紐付けられる仕組みに自分はとても興味があるのだと思う。菩薩にしろ、如来にしろ、そのデザインとコンセプトは人間が作ったもの。

私たちが山や川の気配に触れた時の独特な感覚と感情、神秘的な気配、その総体を十一面観音が引き受けてくれる魅力的な存在なのだ。さらに、十一面観音というフィルターを通すことによって、そこから、様々な仏が展開する仏教世界にもたどり着くことができる。

私はそうして、古代の人々の心や仏教世界に触れようとしていると思う。そうした、指南書として欠かせないのが白洲正子の『十一面観音巡礼』だ。ここには、十一面観音をめぐる国々の物語、地域の風土と信仰、そして、観音をめぐる白洲正子の足跡が記されている。

仏教に触れたいが、どこから触れていいのか、という方にはおススメの一冊。関西の方なら、本書を手に巡礼の道をたどってみるのもいいだろう。

十一面観音巡礼

十一面観音巡礼

 

 

 

十一面観音巡礼 (講談社文芸文庫―現代日本のエッセイ)

十一面観音巡礼 (講談社文芸文庫―現代日本のエッセイ)